分子生物学研究の発展とともに、細胞における遺伝子の変異や発現変化が多くの病気の原因となることが分かってきました。これに伴い、低分子化合物や抗体医薬など【分子】を標的とした治療から、細胞への遺伝子の補充・編集や細胞自体の移植など【細胞】を中心にした治療法が開発されています。
他方、こういったアプローチにおける“細胞に対する特異性”が大きな課題となっています。
遺伝子治療では、標的としない細胞への影響は、安全性の懸念をもたらすことで安全性を担保するために投与量や回数が制限されるなど、作用機序から想定される治療効果を十分に発揮できない治療に繋がります。すなわち、治療に繋がる機序が見つかっているにも関わらず、標的特異性の懸念から実現できない治療アプローチが出てくると想定されます。
また、細胞治療においては、移植に必要な細胞種を純度高く作成するためには課題が多く存在し、同時に移植した細胞の安全性の担保(がん化した移植細胞の制御など)など臨床で解決しなければならない課題も存在します。
つまり、“特定の細胞だけ”治療する、作成する、操作するといったことを実現する必要が出てきています。
Source) Miki et al. Efficient Detection and Purification of Cell Populations Using Synthetic MicroRNA Switches. Cell Stem Cell. 2015
RNAスイッチ技術は、再生医療から遺伝子治療まで多様な創薬領域において活用することができます。細胞治療では作成困難な細胞種の製造、遺伝子治療(ウイルス治療、mRNA治療)ではこれまで以上の精緻な作用制御に活用できると考えています。
弊社では、その中でも特にmRNA医薬品開発へ注力しています。RNAスイッチ以外のRNAデザイン技術を融合させ革新的な創薬につなげていくための研究開発を行い、細胞の種類や状態に応じてON/OFFをコントロールできる“スマートmRNA医薬”の開発を目指します。スマートmRNA医薬を実現することにより、非標的細胞へのオフターゲット効果の軽減を通じた副作用の低減に加え、これまでになかった全く新しい治療アプローチの実現に活用することができると考えています。